インンスブルグ
アルプスの国 オーストリアにはいる。始めにインンスブルグという町にはいった。この町に入った理由、それはこの季節になってもスキーができるらしいという話を聞いていたから。町自体にはあまり興味がなかったが、とにかく、本場アルプスの雪山でスキーをしたい。
結局天気の都合で、3日間待った。そんなに大きくもない普通の町で3日間ぶらぶらした。
「旅の魅力は、自由さにある。何をやってもいいし、なにもしなくてもいい。」カヌーで世界中の川下りをする野田知佑さん。
そんな気分で、気長に待つ。
この旅に1冊だけ日本語の本を持ってきていた。タイトルは忘れてしまったが、自己啓発本であった。車中が長くなるから退屈になったら読めばいいと軽い気持ちで持ってきたものだった。
しかし、しばらく英語漬けの生活で活字に飢えていたこともあって、大変貴重な読書体験を持つことができた。
海外で日本のショップに行くと本や漫画などは約4~7倍の値段がついている。今と違って、現地のインターネットで日本語検索してなんか読もうとすると文字化けしている。スマホなんてないから世の中で何が起きているかを知るにはCNNやBBCと辞書片手に悪戦苦闘するしかない。
だから久しぶりに日本語にふれると、すべての言葉が自分の深いところまで届いて、しっくりきて、内容がすんなり心に響いてくる気がするのである。
そんな状態で読み始めた本である。
当時 自分は何者かにならなくてはと意気込んでいた。周りの人間を見ては比べて、落ち込んで、あんなふうに、こんな奴のようにとあこがれて、そして嫉妬して、落ち込んで、うらやましがり、心がいつも落ち着いていない。
やらなければいけないことはいっぱいあるような気がして、でもすべてがうまくいっていないような気がしている。
そんな時に、手元にあった1冊の本の中に書いてあった言葉に心が晴れた。
「君は、誰か他の何者にもなる必要なない。」
「完璧な人間になる必要もない。」
「もしも何かあったときに君を助けてくれる友人がいればいい。困ったときに頼める友人がいればいい。寂しい時に話を聞いてくれる友人がいればいい。」
「君はただ、友人が助けてあげたいと思えるような人間になればいい。君自身が、魅力的な人間になればいい。」
すっごく心が楽になった気がした。そして人にも優しい気持ちで対することができるようななった気がする。
この度のもう一つの貴重な体験である。
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