· 

Day40 トルコ

イスタンンブール

 トルコはイスラムの国である。列車を降りたとたん、全く違う雰囲気に戸惑う。行き交う人々は中東特有の濃い顔。物価がガクンと安くなるのは助かった。物乞いの子供たちが多い。

 ユースホステルに宿を確保。ここに来ているパッカーはもうヒッピーみたいな人が多い。全体的にゆるーい感じで、「空いているところで抵当に寝てねー」という感じ。しかし観光客相手のツアーの企画が充実していた。

 

 イスタンンブールの町は、中を縦に走るボスポラス海峡でヨーロッパとアジアに区分される。首都になかでアジア地区とヨーロッパ地区があるということ。都市の中心でアジアとヨーロッパ間を橋を渡って行き来できるツアーに参加してバスでヨーロッパからアジアへ一度帰ってみたりした。

 町を歩いた。定時になるとキリスト教の教会にあたるイスラム教のムスクから独特の音楽が鳴り出す。「お祈りの時間だからモスクにいらっしゃいよ」と言っているそううだ。

 有名なブルーモスクに行ってみた。部外者もいれてもらえるのかわからなかったのだがとにかくトライ。入口に人が立っていて、無表情に一枚の大きな布っ切れを渡される。半ズボンをはいていたので下半身に布を巻いて隠せということだった。無知で失礼しました。が、そんな人がちゃんと待機しているということは僕みたいなやつが多くいるということだ。

 ブルーモスクと言うだけあって、素晴らしい青い光に包まれたムスク内。外は真夏の蒸し暑さだが中はひんやり、神聖な領域に立ち入った。そこに何百というほどの信者が一心に祈りを捧げる。ドーム型のムスク内での人々の圧がすごい。

 キリスト教、イスラム教、仏教。しかもキリスト教のなかにもカトリック・プロテスタント・正教があり、イスラム教はもっと複雑そうだ。仏教なんて自分の家の宗派さえもわからいほどなのに。

 

 

 

 

町中を歩いていると、よく「「日本人か」と日本語で話しかけられる。トルコ人は親日家とは聞いていたが、こんなにも日本語を片言でも話せる人がいるとは驚きだ。

 広場で町の雰囲気を堪能していると、人懐っこそうなトルコ人の青年が上手な日本語で話しかけてきた。毎日のように日本語のテレビ番組を放送しているそうで、日本人と話す機会を持ちたかったのだそうだ。

 この青年、「僕が町案内してあげるよ」と自分からかってでてくれた。ちょっと話がうますぎるような気もしたが時間もあることだし、ちょっとついてってやろうかなと歩き出す。

 ガイドブックではわからないようなところを周って、狭い路地を入っていく。やって来たのはトルコ絨毯のお店。普通観光客はこんなところには来ないだろうと思われる、怪しい感じ。

 店主のおじさんは日本人かとにこにこしながら、それは素晴らしい絨毯を惜しげもなく次々と広げて見せてくれる。値段を聞いてしまうとヤバイことになるかもしれない。しかしこんな貧乏そうなバックパッカーに売れると思ってはしないだろう。その素晴らしさに感動もしながら、半分この先ヤバイことにならないだろうかとドキドキし始めていた。

 

 ここで豆知識。本物のトルコ絨毯と偽物はどうやって見分けるとよいでしょうか?

 おじさんが実践して見せてくれた。ライターを取りだし、いきなり絨毯をあぶり出した。もちろん絨毯の表面は焦げて、あの髪の毛を燃やしたときのくさい臭いが充満した。しかしおじさんはにこにこしてササッと焦げた面を擦ると焦げ目は剥がれてもとの鮮やかな面がよみがえった。

 「本物のウール100%ならこうなる。化学繊維が混ざっていると焦げ付いて溶けてしまって、もとには戻らない。絨毯買いにいくならライター持ってきな。そこの店主が焦り出したら、それは偽物だ。」だそうだ。絨毯を買いにいくときはライターをもっていきましょう。

 

 そうこうしているうちに夕方になってきた。「俺のおじさんのうちがカフェやっているから行こう。」ということになった。    サーこれはヤバイかもしれない。一旦店に入ったら鍵をかけられ、拘束され、有り金全部出せと言われるのではないか。

でもここまで親切に色々観光案内してくれて、いろんなこと教えてくれて。

いや、ここまで親切にして最後まで安心させたのは、このお人好し日本人を絶好のカモだと思ったからなのかもしれない。

やはりここで別れた方がいいのか。でももしここで「さようなら」といったら目の色が変わって強引な態度にで出したらヤバイし、と色々頭の中かぐるぐるしているうちにカフェに到着。

ニコニコしたおじさんがトルコ伝統のティーカップに熱いアップルティーを注いでくれた。とても美味しいものだったが、心臓はばくばく。

入り口のドアはまだ開けっぱなしだ。

他に何人かの強面な客はいたが、今のところ男たちの視線はまだ感じない。

熱いアップルティーのせいもあって、汗がじとーっと額を流れる。

もしかしたら、帰るといった瞬間に様子が一変するのかもしれない。

 

どれだけ静かな時間がたったのだろう。やっとのおもいで「じゃ、じゃあ、僕、帰るね」と口に出した。

 「あ、そうなの。今日は楽しかったよ。これからの旅も安全であることを祈っているよ。またいつか。」

 爽やかの笑顔で、みんなで送り出してくれた。

 、、、、、、、、

 あちゃー である。

俺はなんてひどい人間なんだ。俺の方がずっと汚い心で、彼のことを見ていたのだ。相当な自己嫌悪におちいり、しばらく歩き出すこともできなかった。そしてやっと本当に感謝の気持ちが出てきた。

 彼に恩返しすることはできないかもしれないけど、これから一生、もし困っている人がいたら、お節介でもいいから、人のためになることを、小さいことしかできないけど、行動にできるようにしようと誓った。