マドリッド
スペインに入ってから車窓の風景が変わった。ピレネー山脈を越えると大地を感じる。その大地は緑が生い茂っている感じではなく、地平線までずっと荒涼とした大地が続き、川がその大地を深く削りこんでいる。
マドリッドへ来た第一目標はピカソ。ソフィア王妃芸術センターにてご対面できました。ゲルニカです。
1937年スペイン内戦時、ゲルニカという北部の都市が一般市民を狙った空爆を襲った。当時スペインを統治していた将軍フランコに頼まれたナチスによって行われたものだった。それを知ったフランスにいたピカソが7日間で仕上げた大作である。
パリ万博で発表されてから、スペインに帰ってくる間で44年の歳月がかかった。
アメリカで展示されているときに、落書きされるという事件があった。これがスペインに帰ることになるきっかけになったのだが、この落書きをした張本人曰く、
「ゲルニカ以前の戦争をモチーフにした絵画は戦争をきれいに、美化するために描かれていた。しかしゲルニカ以降は戦争がもたらす分断や、おろかさ、かなしみを表現するようになるのだ。」
「ゲルニカはいまでも、声をあげ続けている。しかし、この絵を見る人たちは観光目的になってしまっている。世の中も現実を忘れてしまっているのか、見ようとしていないのか。」
ゲルニカが発表された後には、世界大戦があり、ベトナムがあり、世界中でまだ紛争がつづいている。
ヨーロッパで戦争の話題になると、決まって「被爆国としてはどう思うんだ」と聞かれる。それまで遠い昔のことと思っていた己を情けなく思うのである。いままさに現在進行形で直面している人たちをまえにして、その事を知ろうとも、理解しようともしていなかった己を反省するのである。
ゲルニカは349cm×777cm。この迫力と、パワーに圧倒されて、胸が熱くなり、涙が出て、身動きがとれなくなる。
こんなにもガツンと殴られたことはなかった。
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