パリ
パリにつく夜行列車でユーレイルパスの期限が切れる。ここパリでは気がすむまでゆっくり過ごすことにする。
パリのユースホステルも評判はよくない。しかし安宿(ドミトリー)は充実していてローマのように空き部屋を探すのに苦労することはなかった。
大きめの部屋にベッドが6つ。壁沿いに鍵もろくにかからないような木製のロッカーがそれぞれにあてがわれている。
門限は一応あった。しかしある夜、もうみんな寝静まっている時間に、誰かが入ってきた。すると隣のベッドで寝ているやつと口喧嘩が始まった。どうやら、あとからきたやつがそのベットのほんとの住人らしく、帰ってきたら知らないやつが寝ていたからケンカになったらしい。
基本、一日中歩き回って、帰ってきたらすぐ寝てしまうような日々を過ごしたので、寝れさえすればよい感じだった。2ヶ月もこんな生活をしてきたためか、ちょっとやそっとのことでは動じなくなっていた。
この宿では朝食がついていた。とはいっても食材おいてあるから勝手に食べてねーという感じ。
もう長いことこの宿に住んじゃっているような先輩がしきってくれる。典型的なパリの朝食であるカフェオレと本場焼きたてフランスパン。本場のフランスパンは日本で食べるようなカチコチではなく、とにかく抜群にうまい。
カフェオレは直径15cmぐらいのボウルになみなみと入れて、ジャムなどをつけたフランスパンをびちゃびちゃ浸して 食べる。はじめはおこちゃまみたいで ”え!” と思ったけど、そんな光景は市内のおしゃれなカフェで、きれいなお姉さんたちも堂々とそうやって食べていたので、正当なんだろうと思った。
パリではいってみたいところがたくさんあるが、まずは外側からせめて、メインの美術館のある中心に向かって行こう
ベルサイユ宮殿
完璧なる左右対称。それはそれは豪華絢爛。何てきらびやかな装飾。 その反面、意外なことも判明。トイレがないんです。当時は部屋の隅っこに壺がおいてあって、そこで用を足すのだそううだ。女性はあの大きく広がったスカートのまま跨いで用が足せるというわけだ。
というわけで、フランスで香水の文化が花開くわけです。
庭園も完璧な左右対称。遠くからパッと見は整備され手をかけられきれいだなーと思う。水辺をあるういてみたが芝生まできっちり揃ってきれいだなーと思う。思うけどなんだか物足りなく感じてしまう。
日本庭園の、自然をいかしたまま、人の手が施されていると気づかせないような作り方。わびさびの美しさとは真逆の発想で、自然までをも人間の手で支配してしまおうとする。その辺に違和感を感じた。
エッフェル塔
登るには費用がかかりすぎる。ここは眺めて楽しむことにする。
東京タワーと同じ人が設計したと聞いているが、赤い塔の方が美しく感じる。このパリの町に赤い塔がたっていたら違和感があると思うが、なぜ東京には馴染んでしまうのだろう。
ここで思わぬ再会があった。スペインで出会った、かっぷくの良い日本人のおばさんとスペイン人のパートナー。不思議な偶然にお互い興奮して、チャイニーズフードをごちそうになる。楽しい時間を過ごしているうちに安宿の門限の時間をすっかり忘れるところだった。彼らももう移動しなければならないらしく、別れを告げる。
さあ、門限に間に合わせるには走るしかない。途中セントラルパークを横切っていけば何とか間に合いそうだ。しかしその帯状に長いセントラルパークは夜になると入場できなくなっていた。これを迂回していると絶対間に合わない。えーいここは乗り越えるか。とだれもいないのを見計らってフェンスによじ登る。俺も大胆になったもんだと自分で感心しながら、森のように樹木が生い茂った公園内を走る。
しかし、照明もなく暗い木々の間から、人の気配がする。ぬーっと怪しい雰囲気な人が姿を現す。怖くなって、全速力で走り抜ける。心臓はダブルの意味でバクバクである。「ダヴィンチ・コード」で出てくるシーンでもあったが、ほんとにやばいこところだったらしい。何事もなく宿についたが、しばらくバクバクが止まらなかった。
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